業態は感覚ではなく定量的に理解できる

「焼鳥屋は専門店か居酒屋か?」と質問すると、多くの人は「専門店」と答えるだろう。

マニアックな人は、「最近の焼鳥屋って居酒屋っぽくない?」、「つまみや酒が充実しているし」と答えるだろう。

 

焼鳥屋を定量的に捉えると「居酒屋」である。

この訳は、客単価に占める飲み物と食べ物の比率である「FD比」が、その判断基準だからである。

概念で言うと、専門店やレストランは90:10~80:20、居酒屋は60:40~50:50、バーやカフェ・喫茶店は10:90~20:80.

 

この「FD比」を横軸として、縦軸を「客単価」とすれば、業態の定量的理解が出来る。所謂、マトリクス分析。

一般的な焼鳥屋は客単価2,000円前後のFD比50:50の「居酒屋業態」となる。先述のつまみも飲み物の種類が多い焼鳥屋は客単価3,000円前後のFD比60:40の「居酒屋業態」で、客単価違いの競合となる。

カフェで言えば、先駆者であるDトールは客単価300円と言われ、その競合であるSバックスの客単価は600円と言われているので、FD比は10:90~20:80の「カフェ業態」で客単価違いの競合となる。

ややこしいのは、最近“カフェ”と言うと、オシャレで食事もお茶もお酒も楽しめる店をも指す場合が多い。殆ど多くの今どきカフェ業態は一日の売上を客数で割って定量的に言うと、FD比90:10~80:20の客単価2,000円以内が多く、これはFR(ファミリーレストラン)業態と同一のFD比なので、先述の事例と同様の客単価違いの競合である。尚、FR業態の客単価はRホスト1,250円、Gスト750円である。

 

業態の定量的な理解は「競合を定量的に把握する」という事と、お客様の「利用動機を定量的に理解する」と言う事である。

具体的に言うと、最近では当たり前化した“ちょい飲み」は、従来、FD比90:10~80:20の専門店やレストラン業態だったナショナルチェーン店が、同一店舗で時間帯によって異なる動機(=FD比60:40~50:50の居酒屋業態)を創出した、と言い換えることが出来、結果として、同一FD比の業態である店舗の客を取ることで客数UPを図ったとなる。

この施策の強みは「立地の良さ」、「単価の安さ」、そして「一人でも気軽に入れる」という点である。個食化が進む現代のニーズにピッタリなのである。逆に言うと、大型の夜だけ営業の居酒屋業態にとってはたまったものではない。

 

FD比と客単価で時流を述べるなら、低客単価の業態(=一般的にナショナルチェーン)は積極的に機能性を高めている、具体的にはメニューのアイテム数を増やしている。(事例として、Y野家のメニューを見れば一目瞭然!)更に、スポットで季節商品や企画商品を投入し、話題や魅力づくりを怠らない。

人口減少の上、少子高齢化は飲食店舗の絶対数が減る事を意味する。誰でも今まで通りに店を続けていけないという事。残るべくして残る“価値”がある店だけが生き残る。

同一FD比の客単価違いは競合と言える。客単価が同一であればナショナルチェーンであっても真っ向勝負の相手となる。個人店、中小外食企業の方々には、今一度、ナショナルチェーン店研究をおススメする。その際、「マズイ!」と一刀両断する必要は無い。見どころは、「どんな商品を取りそろえていて」、「どんな商品をいくらで提供し」、「どんな品質か」である。

 

私は先述通り、業態を「FD比」⇒「客単価」で分解し、そして「店舗デザインまたはメニューコンセプト」の3段階で分類し体系的に捉える。やはり、3段階目で「感覚的」要素は必要となる。お客様は逆で「店舗デザインまたはメニューコンセプト」⇒「客単価」で店を分類する。

感覚的経営に陥りやすい飲食店経営。やっている本人でさえ、自店の業態を感覚的に捉えていてはプロとは言えない。ここにお伝えした通り、「FD比」を以て業態を定量的に捉え、論理的思考でも自店を捉える事で、厳しいサバイバルレースを生き残って欲しい。



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